食物アレルギー
★ 食物アレルギー診療のポイント
食物アレルギーは、食という我々の生活に密着した事柄に関係する病気でありながら、小児科における最も混乱している病気にもなっています。混乱の最大の原因は、「不正確な診断」です。特に、血液検査(特異的IgEなど)を重視し過ぎた診断は、過剰な除去食を生みだしやすいと言えます。さらには、交差反応性に対する誤った理解も、摂取可能な食品を減らす元となります。すなわち、「牛乳アレルギーであれば必ず牛肉も除去すべきである」、「鶏卵アレルギーであれば必ず魚卵も除去すべきである」、などは誤った認識であり注意すべきです。
また、世の中の母親は除去された食品をいかにして解除していくのかについて日々悩んでいます。除去を指示した医師が、解除の方法を指導していないため母親が困っているのです。母親は、こどもの栄養面、除去解除について、園や学校生活など多くのことに対してストレスを感じており、このような点からも食物アレルギーが社会的な問題を抱えた疾患であることがわかります。
食物経口負荷試験
「原因食物に対するアレルギーの診断は、血液検査(特異的IgEなど)や皮膚テストだけでは不確実です。実際に食べられるのかどうかは食物負荷試験で判断します。 しかし、食物負荷試験は、重い症状が出現することもあり危険をともなう、手間がかかる、やり方がわからない、などの理由からほとんどの病院・医院で行われていません。当院では、完全予約制で食物負荷試験を施行させていただきます。
ここ数年の間に、食物アレルギー児の管理方針が大きく変化してきました。すなわち、「食物の除去を必要最低限にする。」ということです。これはアレルギー症状を起こす食物を無理に食べさせろという意味ではありません。症状が出ない食物を見つけ出し、できる限り多品目を食べさせてあげるということです。この過程でどうしても食物負荷試験が必要になってくるのです。
アナフィラキシー時の対応
外来では以下のような質問にお答えします
「アナフィラキシー(ショック)とはどのような状態でしょうか?」
「エピペン®(アドレナリン自己注射器)を持っていた方が良いのでしょうか?」
「エピペン®(アドレナリン自己注射器)を使用するタイミングがわかりません」
食品表示の見方
食品表示の見方について指導します。外来ではポイントのみお話します。主にアレルギー院内勉強会で詳しく説明させていただきます。
※患者さんがわかりづらい表示の例
『乳糖・乳酸カルシウム・乳化剤・カカオバター・蛋白加水分解物・卵殻カルシウム』
食物アレルギー診断書、意見書作成
園や学校の給食などに必要な指示書・診断書などを作成記載させていただきます。
除去食品、誤食時対処法(アドレナリン自己注射薬使用法を含む)などについて指示させていただきます。
指示書の書き方に関する問題点もあります。
例1)あいまいな指示は避ける
「牛乳少量摂取可能」、「十分に加熱した卵は可能」などの曖昧な指示は、調理場の混乱を招きます。少量とはどれだけの量なのか?、十分な加熱とは何℃何分で加熱したものを指すのか?ということです。
アレルギー食品に対する指示の基本は完全除去です。
例2)検査結果の記載は必要か?
「小麦の摂取可 小麦特異的IgE クラス3(4.82)」
と記載されていた場合、園や学校は当惑しないでしょうか?なぜ、検査の数値が陽性なのに食べさせてよいのかと・・・。最終的に重要なのは、ある食品が実際に食べられるのかどうかということです。検査結果は情報としてあまり意味がありません。