軟膏・クリームなどの外用剤を皮膚に塗る方法としては、単にそのまま皮膚に塗る単純塗布法以外に、重層療法や密封療法があります。今回は重層療法について説明しましょう。重層療法とは、炎症の強い皮膚病変にまずステロイド外用薬を単純塗布し、次に亜鉛華軟膏などを上から重ねて塗布する方法です。通常は、単に重ね塗りする(重層塗布法)のではなく、亜鉛華軟膏をリント布に塗って上から貼りつける方法(重層貼付法)が選択されます。したがって、重層療法というと重層貼付法を指して言う場合がほとんどです。
重層療法の利点・欠点について説明しましょう。利点としては、第一に、単純にステロイド外用薬を塗布するよりも短期間で湿疹を改善させることが可能となるということです。治療のスピードは重要です。早く患者さんの痒みをとって楽にしてあげるということはもちろんのこと、スピードが遅いと「掻く余裕を与えてしまう」危険性があるからです。第二に、リント布で覆っているので、掻き壊しにくくなるというメリットもあります。最後に、重層療法は手間がかかりますが、効果も高いので、「頑張って治療しているんだという」意欲が高まりやすいと言えます。この方法を行って湿疹が改善している患者さんやその家族は、受診するたびに表情が明るくなっていくように感じます。重層療法の欠点としては、何と言っても手間や時間がかかるということでしょう。リント布をはがした後も皮膚に亜鉛華軟膏がべっとりと付着していますから、それをオリーブ油等で拭き取らなければなりません。しかし、このような手間のかかる面を除けば非常に治療効果の高い優れた方法です。掻き壊してジュジュクした皮膚、象の皮膚のように厚く硬くなっている(苔癬化)皮膚のどちらにも効果が高いと思われます。