食物アレルギーの原因食品をひたすら除去し続けるのではなく、積極的に経口摂取させることによりアレルギーを治すことを目標とする治療法が注目をあびているというお話をしました。この治療法について考えるとき、「経口免疫寛容」という機構を知っておくことは重要でしょう。経口免疫寛容とは、口から体内に入ってきた異物(非自己の抗原)に対して過剰な免疫反応が起きないようなしくみです。つまり、肉や魚などの食品はヒトにとっては異種のタンパク質ですが、これらの我々にとっての食べ物に対して拒絶反応のようなものを起こしてしまったらヒトは滅びてしまうので、そのような反応が起きないようにうまくできているわけです。簡単に言ってしまえば、「本来は、口から入ってきたものに対してはアレルギーを起こしにくい」という感じでしょうか。「本来は、・・・」と付け加えたのは、食物アレルギーのように経口免疫寛容の機能不全が生じている場合もあるからです。
我々は、口から入ってくるもので、善いもの(食べ物)と悪いもの(細菌やウイルス)とをどのように見分けているのでしょうか?、どのようにして食物アレルギーが発症していくのでしょうか、すなわちいかなる過程で経口免疫寛容の機能不全が生じていくのでしょうか?。また、どのようなしくみで食物アレルギーが治っていくのかについても未だ明らかにされていません。治りやすい患者さんと治りにくい患者さんの違いはどこにあるのでしょうか?疑問点は尽きません。
「少しずつ食べさせるとより多く食べられるようになる」という臨床的な現象は明らかになってきたようです。今後は、安全で確実な特異的経口耐性誘導療法(経口減感作療法)を確立するために、上記のような様々な疑問点が解決されていくことが期待されます。