赤ちゃんのアトピー性皮膚炎は、生後1~3ヵ月頃に顔面の湿疹で始まることが多いようです。一番の特徴は強い痒みでしょう。これは初めはわかりにくいかもしれませんが、注意して見ていただきたい症状です。お母さんの胸や布団に顔をこすりつけたり、次第に器用に手を使って掻きむしったりするようになります。皮膚に引っかき傷があれば、掻いた証拠になります。
その他、耳切れがある、湿疹がしつこくて治りにくい、だんだんと胸や手足にも湿疹が拡がってきたなどがあれば、アトピー性皮膚炎の診断が確定されます。
さて、この病気の診療に関して問題にすべき点がいくつかあります。まず第一に、アレルギー専門の医師からみればどう考えてもアトピー性皮膚炎であるのに、「乳児湿疹」と説明されている場合が非常に多いということです。母親に対して、「お子さんの診断はアトピー性皮膚炎です。」と告げることはそんなに残酷なことなのでしょうか。少なくとも私はそのようには思いません。しっかりと病気を診断し、それに合った治療法を選択していく方が、よっぽど合理的であると考えられます。むしろ、「診断がはっきりして納得できた。」とおっしゃる母親の方が多いような気がします。
もう一つ重要なこととして、この乳児のアトピー性皮膚炎が高率に食物アレルギーを合併するという事実があります。この病型は厚生労働科学研究班による「食物アレルギーの診療の手引き2008」において、「食物アレルギーの関与する乳児アトピー性皮膚炎」として分類されています(2008/07/14)。以前にも述べましたが、この病型は非常に重要です。つまり、乳児期早期のアトピー性皮膚炎を的確に診断すれば、合併する食物アレルギーを早期に発見できるということです。離乳食開始前にある程度の検討をつけることができれば、赤ちゃんに無用なアレルギー反応(アナフィラキシー等)を起こさせなくて済むことになります。
この流れで診断していくことは、小児アレルギー関連の学会では常識となりつつあります。多くのアトピー性皮膚炎の赤ちゃんが適切に管理されるようになることを望みます。