連休明けから、目の痒みや充血、鼻水、鼻づまり、顔の発赤などを受診理由として来院する患者さんが増えています。中には、毎年5-7月頃に同様の症状が強く出ると訴える患者さんもいます。これらはおそらくイネ科の花粉によるアレルギー症状だと思われます。
花粉症と言えば2-3月のスギ花粉症が有名ですがこの初夏にみられるイネ科花粉症も侮れないものがあります。イネ科花粉はスギ花粉ほど遠くに飛散しませんが、抗原性が強く、顔が腫れあがったり、呼吸困難を訴えたりする患者さんを見かけることがあります。主な植物としては、カモガヤが有名ですが、その他ハルガヤ、オオアワガエリ、ホソムギ、スズメノテッポウ、スズメノカタビラなどがあります。
私は以前、強い呼吸器症状のため野球の練習を中止せざるを得ないような重症のイネ科花粉症患者さん(当時中学生)を経験したことがあります。彼の症状は、抗ヒスタミン薬の内服や点鼻のステロイド薬では十分に治まらなかったので、イネ科抗原ワクチン(米国から輸入)を用いて急速免疫療法(減感作療法)を行いました(アレルギー, 56 (11): 1403-1407, 2007)。この治療は著明な効果を発揮し、現在ではほとんど症状がみられなくなっているとのことです。ちなみに当初彼は他の病院で喘息の診断を受けていました。しかし実際は彼の呼吸器症状は喘息ではなくてイネ科花粉症によるものでした。こんな重症の花粉症もあるということです。