皆さんは、喘息様気管支炎という病名を聞いたことがあるでしょうか。喘息性気管支炎と呼ばれることもあります。1~2歳くらいの小さなお子さんが風邪をひいた時にゼーゼーするような状態を指す病名です。通常は、比較的元気はよく呼吸困難やチアノーゼ(皮膚が青紫色になる状態)を伴いません。小さなお子さんは気管支が細いので感染によって分泌物が貯まり、痰が上手に出せないために起こるということです。さて、この喘息様気管支炎と気管支喘息(以下、喘息)との違いとは何なのでしょうか?本当に喘息様気管支炎という病気は存在するのでしょうか?実はゼーゼーしている乳児は喘息様気管支炎ではなくて喘息であるということはないのでしょうか?
呼吸困難やチアノーゼを伴う、気管支拡張剤の効果がある、アレルギーの素因があるなどの場合は、どちらかと言えば喘息の可能性が高いということになるのでしょうが、ある面あいまいなものです。そもそも乳幼児の喘息は風邪などのウイルス感染をきっかけとしてゼーゼーすることが多いわけであり、「風邪をひいてゼーゼーするのはまさに喘息なのではないか?」とも思ってしまいます。
喘息の病態を示す重要な概念として『気道過敏性』というものがあります。言わば、どれだけゼーゼーしやすいのか?ということです。この気道過敏性という点から考えると、気道過敏性を伴うものが喘息であり、気道過敏性がないかほとんど伴わないものが喘息様気管支炎であると言えます。両者が初めから全く異なる病気なのか、それとも喘息様気管支炎を繰り返していくうちに気道過敏性を獲得し喘息になっていくのか、興味深いところです。
このような乳児の喘息の診断の難しさもあることから、小児アレルギー学会では一つの診断の目安を提示しました。すなわち、風邪の有無に関わらずゼーゼーするような症状を3回繰り返したら乳児喘息とすると決めたのです。
結局、乳幼児の喘息をどのように診断するのか?さらには、喘息とは何か?という問題につながるわけであり非常に難しい議論です。