アトピー性皮膚炎の発症に関わる重要な因子として、皮膚のバリア機能障害が挙げられます。健康な皮膚にはバリア機能が備わっており、外部からの刺激や細菌が体内へ進入すること、体の表面から水分が蒸発することを防いでいます。
アトピー性皮膚炎患者さんの皮膚では、この防御機能が障害されており、結果として湿疹が悪化してしまうということです。
治療の戦略としては2段階に分けて考えるとわかりやすいでしょう。
まず第一にステロイド外用薬で皮膚の炎症(赤み、ジュクジュク、痒み等)を抑えるということです。炎症とはケガのようなものです。ケガは修復しなければいけません。皮膚の見た目がきれいになるまで治療を続けます。
しかし、これで終わりではないのです・・・。
多くの患者さんは皮膚の見た目がきれいになるとそこで安心してしまいます。
ステロイドを完全に中止してしまう、日々のスキンケアを怠ってしまう、さらには受診間隔があいてしまう、というパターンに陥っていくわけです。
ステロイドは炎症を抑える薬でありバリア機能を回復させる薬ではないということを十分に認識しておく必要があります。
そこで第二段階です。
最初にお話したように皮膚のバリア機能障害が問題になっているわけですから、それをできる限り改善させる治療が重要になってきます。ここで鍵をにぎるのが日々のスキンケアです。すなわち、毎日入浴やシャワー浴をし、泡立てた石けんで汚れを落とした後、十分に洗い流します。そして見た目のきれいな皮膚にも保湿剤を塗布することを怠らずに続けることです。
いったん十分に皮膚のバリア機能が回復すれば、簡単に湿疹がぶり返すことは少なくなってきます。
なお、一気に第一段階から第二段階に移行できるわけではないので、ステロイド外用薬はゆっくりと間隔をあけて減量していくことになります。