医師が使用する薬の種類は数えきれないですが、比較的穏やかに作用する薬や効果がはっきりと実感できる薬など様々です。
私もこれまで多くの薬を処方してきましたが、アレルギーの診療においては初めて吸入ステロイド薬を使ったときのことは忘れられません。
私が吸入ステロイド薬を使い始めたのは1995年くらいだったと思います。その頃はまだ周囲の小児科医はこの薬をほとんど使用していませんでした。しかし、
何回も、時には何十回も入退院を繰り返す喘息児たちをみて「何とかならないものか?」と大いに悩みました。
そして、医学雑誌で紹介されていた吸入ステロイド薬を発作を頻繁に繰り返していた小学生の女児に初めて処方したのです。この時使ったのは『アルデシン』という薬で、『インスパイアイース』というスペーサー(吸入補助器具)を併用しました。
詳細な経過は忘れましたが、この患者さんの発作が激減したこと、全く入院しなくなったことをはっきりと覚えています。
吸入ステロイド薬という薬の効果に驚いたことは今でも忘れられません。すごい薬だと感じました。
「この薬があれば喘息発作で苦しんでいる子どもたちを助けられる」
「なんでこんなに効果がある薬なのに使用しない医師が多いのだろうか?」
「副作用は心配ないのか?」
など多くの思いや疑問が湧き上がりました。
それからの10年間は、「喘息の勉強=吸入ステロイド薬の勉強」みたいな時代だったと思います。