さて、減感作療法はすべてのアレルギー疾患に効果を発揮するのでしょうか?減感作療法が特に有効なのはどんなアレルギー疾患なのでしょうか?
最も有効なのは単一の抗原(アレルゲン)を原因とする単純なアレルギー疾患です。すなわち、ハチアレルギーはハチ毒に対するアレルギーであり、こういうアレルギーを有している患者さんにハチ毒の減感作療法を施行するとほぼ100%有効であると言われています。スギ花粉症の患者さんにスギ花粉エキスを用いた減感作療法を施行した場合も、確かな治療の手ごたえを感じます。つまり、Aという抗原に対するアレルギーをもつ患者さんにAのエキスを用いた減感作療法を行えば、それなりに有効であるはずであるということです。
アトピー性皮膚炎や気管支喘息はどうでしょうか。これらの疾患はアレルギー疾患と言っても単純な病態ではありません。ダニとか花粉とか特定の抗原だけが問題になってアトピーや喘息になっているというわけではないのです。もっとたくさんの因子が関与していますし、そもそも単なるアレルギーの病気ではないという側面があるのです。
アトピー性皮膚炎においては皮膚のバリア機能障害という側面がありますし、気管支喘息にしても、「気道上皮の異常」という部分が問題になってきています。
つまり、アレルギー性炎症に加えて、「皮膚が弱い」、「気道が弱い」という側面があるということです。このような遺伝的な問題に対しては減感作療法は効果を現さないと思われます。それでは、「気管支喘息に対して減感作療法は無効なのか?」と言えば、簡単には結論付けられないと思います。アレルギーの関与の大きいタイプの喘息患者さんの発症早期に減感作療法を行えば、喘息の悪化を防げる可能性があるかもしれないのです。