アトピー性皮膚炎に限らない話かもしれませんが、多くの病気が自然治癒傾向を伴うものです。つまり、何も特別な治療をしなくても病気が自然に治ってしまうことがあるということです。アトピー性皮膚炎で言えば、乳児期発症のものは1歳を過ぎると割りと良くなってくるような印象があります。もちろんしっかり治療すれば、あの顔面にみられるジュクジュクした湿疹が早く改善するわけですが、極端なことを言えばどんな対応をしたとしてもいずれは良くなってくることが多いのです。
ここで今回述べたい注意点が一つみえてきます。民間療法のような間違った治療法を行っても良くなってしまうことがあるという点が要注意なのです。患者さんは、「自分が選択した治療は効果があった。」と誤解してしまうわけです。この解釈による周囲へのアドバイスは人々を混乱させる要因となり得ます。「・・・の治療法は良く効く。」、「ステロイドを使用しなくても治る。」という論理につながってくるといよいよやっかいです。アトピー性皮膚炎の全てがステロイド外用薬を使用しないでも短期間で改善してしまうわけではありません。むしろ適切にステロイドを使用しないと、痒みのために著しく生活の質が低下したり、湿疹が重症化して治療が困難になったりする可能性が高まる心配もあるのです。民間療法が全て問題のある治療法であるとは言い切れないかもしれませんが、少なくとも専門の医師が第一選択として行う治療法ではないことは確かです。本当に有効で医学的根拠のある治療法は何であるのかを意識していただきたいと思います。