今回の学会の主要なテーマの一つとして、「免疫療法を見直しましょう」というものがあったと思います。この免疫療法という治療法に関しては、現在小児アレルギー領域では2つの相反する流れが見てとれます。1つは、食物アレルギーに対する経口免疫療法(経口耐性誘導療法)であり、微量摂取でアナフィラキシーを発症し、その恐怖に怯えていた患者さんたちに対して、原因となるアレルゲン食品を極微量から少しずつ摂取させ、限られた期間にある一定量までの摂取を可能にさせていく治療法です。この治療法は経過中にアレルギー症状の誘発を伴うことが少ないとは言えず、気軽に行えるものではありませんが、患者さんおよび家族の熱意(もちろん主治医の熱意もあるでしょう)には計り知れないものがあり、急速に多くの施設で取り組まれるようになっています。まだまだ多くの課題は残されていると思いますが、少なくとも数年はこの治療法の話題で盛り上がることでしょう。
さて、もう一方の流れとは、喘息やアレルギー性鼻炎に対する皮下注射法の免疫療法についてのことです。そもそも、アレルギーにおける免疫療法に関しては、食物アレルギーの免疫療法などよりもこちらの皮下注射法の治療の方が歴史が古く、学会長の栗原先生が食物アレルギーの経口耐性誘導療法に取り組まれたきっかけも、ずっと以前からスギ花粉症に対する皮下注射法の免疫療法を行ってきており、かつその有効性を実感していたからだということです。それにしても、現在のわが国のアレルギー領域における皮下注射法の免疫療法の状況はいかがなものでしょうか。有効性に対して疑問があるのか、注射の痛みを伴う点が煩わしいのか、アナフィラキシーショックの不安が大きいのか、治療の普及を妨げる理由はいろいろあるのだと思います。スギ花粉症の免疫療法は効くと思うのですがもう少し広く取り組まれないでしょうか?以前にも書いたように、喘息に対するダニ・ハウスダストの免疫療法については「本当に効くのだろうか?」という疑問は抱いてしまいます。喘息は多因子疾患ですし、アレルギー以外の気道上皮の異常という問題もあります。そのような疾患に対して、ある一種の抗原(ダニ)を用いた免疫療法を行っても、著しい効果は期待できないのではないか・・と考えてしまうわけです。しかし、そのような疾患であるからこそ興味があります。「喘息の早期(乳幼児期)にダニの免疫療法を施行すれば、自然経過を変えることができるのではないか!」などと期待してしまったりします。ただ、乳幼児に皮下注射を繰り返し行うことは無理です。それなら舌下法がよいのか・・。ちなみに、国内のハウスダストエキスを使用して舌下法をやるのはだめだと思います。注射をやってみるとわかりますが、スギのエキスと比べると、局所(上腕)の反応が少なすぎます。明らかに抗原量が少ないはずです。とてもこの濃度では舌下で効くとは思えません。あくまでも個人的な感想ですのでお許し下さい。