文部科学省より、今後の学校給食における食物アレルギー対応についての通知がありました(3月26日)。
25文科ス第713号
平成26年3月26日
各都道府県知事
各都道府県教育委員会教育長
各指定都市教育委員会教育長 御中
附属学校を置く各国立大学法人学長
構造改革特別区域法第12条第1項の認定
を受けた各地方公共団体の長
文部科学省スポーツ・青少年局長
久保公人
今後の学校給食における食物アレルギー対応について(通知)
食物アレルギー等のある児童生徒に対しては、文部科学省監修の下、平成20年に公益財団法人日本学校保健会が発行した「学校のアレルギー疾患に対する取り組みガイドライン」(以下「ガイドライン」という。)に基づく対応をお願いしているところです。
平成24年12月に、食物アレルギーを有する児童が、学校給食終了後にアナフィラキシーショックの疑いにより亡くなるという事故の発生を受けて、文部科学省では、平成25年5月に「学校給食における食物アレルギー対応に関する調査研究協力者会議」を設置し、学校給食における食物アレルギー対応の充実方策について、総合的・専門的な観点から検討を依頼し、本年3月、別添1のとおり、報告書を取りまとめていただきました。
本報告書では、学校給食における食物アレルギー対応に関して、「ガイドライン」に基づく対応の徹底が必要不可欠であると、改めて確認されるとともに、今後の改善・充実方策等について具体的に提案されました。
文部科学省としては、本報告書を踏まえ、今後さらに施策の充実に取り組むこととしており、貴職におかれましても、別添1、2を参考にしながら、下記について、御対応いただくようお願いします。
また、各都道府県教育委員会においては、域内の市区町村教育委員会並びに所管の学校及び学校給食施設に対し、各都道府県知事においては、所管の学校法人等に対し、この趣旨について、周知を図っていただくとともに、適切な対応がなされるよう御指導をお願いします。
なお、文部科学省では、各自治体等における取組状況について、今後、継続的な把握に努めることとしておりますので御協力をお願いいたします。
記
1 学校給食における食物アレルギー対応の基本的な考え方
(1)学校給食における食物アレルギー対応においては、「ガイドライン」や学校生活管理指導表(アレルギー疾患用)(以下「管理指導表」という。)に基づく対応が重要であること。このため、「ガイドライン」の周知を図るとともに、その徹底のための措置を講じる必要があること。
(2)「ガイドライン」の内容に関する周知徹底や適切な緊急時対応を行うことができるよう、教職員等に対する研修の充実を図る必要があり、役割に応じた研修会の実施や研修時間の確保が重要であること。
(3)給食提供における事故防止の徹底のため、アレルギー対応を踏まえた献立作成の配慮や給食の各段階におけるチェック機能を強化し、継続的に改善する取組が必要であること。
(4)緊急時対応の充実を図るため、積極的なアドレナリン自己注射薬(「エピペン(登録商標) 」)の使用を促すための措置を講じるとともに、学校の状況に応じた危機管理マニュアルの整備が不可欠であること。
(5)教育関係者のみならず、医療関係者、消防機関等の幅広い関係者が共通認識を持って食物アレルギー対応に当たることが重要であり、関係者間、関係機関間の連携体制の構築等に努めるべきこと。特に、小規模の市町村や学校等において、地域の医療機関等との連携が困難な地域に対しては、各都道府県教育委員会において、広域的な連携体制の構築を進めるなど、必要な支援を行うべきこと。
2 都道府県・市区町村教育委員会における対応
(1)学校におけるアレルギー対応についての方向性の明示
1)学校における食物アレルギー対応については、「ガイドライン」や「管理指導表」を活用しながら、関係者が共通認識を持って対応に当たることが重要であることについて、教育委員会内の共通理解のもとに、その推進を図ること。
2)学校関係者、医療関係者、消防機関等の関係者と定期的に協議の場を設け、管内の学校の調理場等の施設整備や人員配置、また、アレルギーのある児童生徒の情報について、関係者間で共有しながら、具体的なアレルギー対応について、一定の指針を示すこと。
(2)アレルギー対策の研修会の充実
1)アレルギー対策の研修会等について、一定の質を確保しつつ、管理職や教諭、養護教諭、栄養教諭、調理員、その他給食関係者など、職種に関わらず、全教職員がアレルギー対応について学ぶ機会を提供すること。また、これらの取組に継続性を持たせるため、管理職研修や危機管理研修に位置付けるなどの工夫をすること。
2)学校単位での校内研修の実施を進めるとともに、それら研修会への講師派遣等について協力すること。
(3)その他
1)アレルギー対応の充実のために、効果的な給食管理の在り方や、調理場の整備(施設整備や人員等)、栄養教諭の配置拡大の方策等について検討すること。
※国立学校、私立学校においては、各設置者の判断により、必要に応じて、上に掲げる公立学校における対応内容に準じて取り扱うものとすること。
3 学校における対応
(1)学校におけるアレルギー対応の体制整備について
1)学校での管理を求めるアレルギーの児童生徒に対しては、「ガイドライン」に基づき、学校生活管理指導表の提出を必須にするという前提のもと、管理職を中心に、校内の施設整備や人員配置を踏まえ、具体的なアレルギー対応について一定の方針を定めること。
2)校内のアレルギー対応に当たっては、特定の職員に任せずに、校内委員会を設けて組織的に対応すること。具体的には、
・児童生徒ごとの個別対応プランの作成
・症状の重い児童生徒に対する支援の重点化
などの取組を図ること。
3)給食提供においては、安全性を最優先とする考え方のもと、
・献立作成から配膳までの各段階において、複数の目によるチェック機能の強化
・食物アレルギー対応を踏まえた献立内容の工夫
・食材の原材料表示
・誰が見ても分かりやすい献立表の作成
などの実施に努めること。
(2)緊急時の体制整備について
1)学校の状況に応じた実践可能なマニュアル等を整備する。その際には、例えば、既存の危機管理マニュアル等について、アレルギー対応の観点から見直すなどの取組も考えられる。
2)緊急時対応に備えた校内研修の充実が必要であり、
・「エピペン(登録商標)」の法的解釈や取扱いについての研修
・教職員誰もが「エピペン(登録商標)」使用を含めた緊急時対応のための実践的な訓練などに取り組むこと。
(3)保護者との連携について
1)特に入学前においては、入学後に学校における適切なアレルギー対応ができるよう、学校や調理場の現状を保護者に理解してもらうとともに、食物アレルギー対応に関して、保護者からの十分な情報提供を求めること。
2)食物アレルギーの児童生徒の保護者に対しては、専門の医療機関に関する情報や、アレルギー対応に関する資料を紹介するなど、必要に応じてケアを行うこと。
(4)その他
1)児童生徒の発達段階を踏まえた上で、食物アレルギーに関する指導に取り組むこと。