アトピー性皮膚炎のお子さんを持つ保護者の中で、「うちの子は見た目がきれいな部分の皮膚も非常に痒がる」、「ステロイドを塗っていったんきれいになったのにすぐにその部分を痒がる」などの経験をされている方は少なくないと思います。実は、アトピー性皮膚炎の患者さんの皮膚は見た目が普通に見えていても、正常の方の皮膚とは異なる「表皮バリア機能異常」を有しているのであり、このため皮膚を痒がったり、皮膚が乾燥したり、細菌やウイルスなどの感染に脆かったりするのです。この表皮バリア機能異常は、遺伝的なもの、つまり生まれつきのものである可能性が高く、実際にいくつかの遺伝子異常が明らかになっています。
さて、このような観点から冒頭に示した保護者の悩みに対する対策を考えてみましょう。まず、ステロイドを塗っていったんきれいになったように見えても、すぐにステロイドの塗布を中止しないことがポイントになります。皮膚の炎症が治まりバリア機能が回復してくまでは時間がかかるのです。毎日塗っていたステロイド外用薬を1日おき、2日おきと徐々に間隔を拡げていく間欠塗布療法を用いてゆっくりと中止していくことです。この方法を用いればすぐに皮膚が悪化することがなくなりますし、副作用を減らすこともできます。さらには、見た目がきれいでも表皮バリア機能異常があり皮膚が弱いわけですから、きちんと皮膚を洗浄し保湿剤をこまめに塗るというスキンケアを継続する必要があります。とにかく「見た目」にだまされずに地道に治療すべきであるということです。