現在、小児アレルギーの専門施設における紹介患者さんの中心は、乳児期のアトピー性皮膚炎および食物アレルギーです。「小児科や皮膚科を数軒受診したが皮膚炎が改善しないので何とかしてほしい」、「ステロイド外用薬の使い方がわからないし、副作用が心配」、「離乳食をどのように与えればよいのかわからない」、「アトピー性皮膚炎と食物アレルギーの関連が知りたい」などを主訴として多くの乳幼児が紹介受診されるのです。
一方で、小児喘息の紹介患者さんは減少している状況です。患者さんもよほど重症で困っているのでなければ、わざわざ自宅から遠くの待ち時間の長い総合病院を受診しようとは思わないのでしょう。ちなみに「重症で困っている」とはどんな状態かと言えば、発作による入院を繰り返すためまともに幼稚園や学校に行けないような状態を指します。昔はこのような重症の喘息児が多数いて長期の入院を必要としました。現在は全くいなくなったわけではないですが、非常に稀なことになりました。今どき、喘息がひどくて学校に行けない、体育ができない、林間学校に参加できないなどという患者さんはそんなに多くはないのです。このような状況に大きく貢献したのが吸入ステロイド薬であることは間違いないでしょう。吸入ステロイド薬という強力かつ安全(適切に使用すればということです)な薬剤の登場により、喘息の治療・管理は大きく前進したのです。
さて、開業してみてわかったことですが、0歳から2歳くらいの小さなお子さんでゼーゼー、ヒューヒューする患者さんが開業医の外来には数多くいるということです。これらの喘鳴(ぜんめい)を呈する患者さんの中から、長く症状が持続する可能性が高い真の喘息患者さんを見抜いていくことや、それらの喘息患者さんを治療していくことは非常にやりがいのあることであり、かつ責任も重大だと思います。
乳児喘息は小児喘息の専門家にとっては課題領域の一つとされています。その理由としては、早期の診断が難しいこと、肺機能検査・気道過敏性検査などの実施が難しいこと、いかなる早期介入(早い時期から治療や管理を行うこと)によってより良い予後が得られるのか不明であることなどがあります。「乳児喘息の患者さんは専門施設よりもむしろ開業外来に多い」という状況を考え、何か将来の患者さんに貢献できるような価値のある研究ができないものかと思案中です。