IgEは免疫グロブリンという蛋白質の1つです。免疫グロブリンには、IgA・IgG・IgD・IgE・IgMの5種類がありますが、血液中に多量に存在するIgGと比べIgEは血中濃度が著しく低く保たれています。IgEは、アレルギー疾患や寄生虫疾患で高値を示すので、患者さんにとっては「アレルギー検査」としてよく知られるものになっています。現在、臨床の現場で測定されているIgEには、特定の抗原に対する反応性をみている特異的IgEとIgE全体の量としての総IgEがあります。
患者さんが知っておくとよいと思われるIgE検査の見方は、
1)総IgEが高値であることは、「アレルギー体質あり」の可能性を示すものですが、あくまでも可能性ありということです。何らかのアレルギー疾患やアレルギー症状を伴っている場合に、初めてアレルギー体質と言えると思うのですがどうでしょうか。いやわかりません。総IgEが高値でアレルギー体質を持っているから、現在は無症状でも、今後何らかのアレルギー疾患を発症してくるというパターンもあるかもしれません。いずれにせよ、「アレルギー体質の可能性あり」で間違っていないということですかね・・・。
2)上記のように、寄生虫疾患でもIgE高値となるので注意を要します。また、「高IgE症候群」という先天性の免疫不全症候群もありますが、私は経験したことがありません。
3)総IgEの基準値は成人では170IU/ml以下となっています。小児では、1歳未満だと10 IU/ml以下くらいが基準値で、その後年齢とともに上昇します。なお、母体のIgEは胎盤を通過しません。
4)総IgEは、アレルギー疾患の中では、アトピー性皮膚炎において著しい高値をとることがあります。アトピー性皮膚炎の治療により皮膚状態が改善すると、総IgEが低下する傾向があります。
5)抗原特異的IgEが陽性でも、その抗原がアレルギーの原因物質とは限りません。例えば、スギ花粉IgE陽性という結果だけではスギ花粉症という診断にはならないということです。その人がスギ花粉によってくしゃみ・鼻水などの症状を呈するという事実と組み合わせて診断されるということです。
6)5)に関連しますが、要するに抗原特異的IgE陽性でもその抗原に対するアレルギー陰性という場合があるということです(検査偽陽性)。例えば、小麦特異的IgEは陽性だが小麦を普通に食べることができるという人がいるということです。
7)以上からわかるように、食物アレルギーなどの場合、特異的IgEの結果に頼り過ぎると本当は食べられる食品をアレルギー有と思い込んで除去してしまう危険性があります。食物経口負荷試験などを参考にして正しい診断を行う必要があります。