日本においては、ダニはアレルギーの主要な原因物質であり、気管支喘息やアトピー性皮膚炎などの病状を悪化させます。ダニの種類は数万種知られていますが、家の中で発見されるダニの90%はチリダニであり、その中でもはヤケヒョウヒダニとコナヒョウヒダニの2種類が最もアレルギーに関わっているダニとなっています。さらには、実際にアレルギーの原因となるのは、ダニそのものよりダニの出すフンに含まれるタンパク質です。外来診療の血液検査でよく調べられているのは、これら2種類のダニに対する特異的IgE抗体価です。
ダニとアレルギー疾患の関係というと、ダニ抗原とダニ特異的IgE抗体との抗原抗体反応が思い浮かぶでしょうし、もちろんその反応が重要であるのは間違いないはずですが、ダニの生体への影響はそれだけにとどまらないことがわかってきており非常にやっかいなことです。
例えば、ダニ抗原が有するプロテアーゼ(タンパク質を分解する酵素)活性によりアトピー性皮膚炎患者さんの皮膚バリア機能が直接的に障害を受ける可能性があります。また、気管支喘息患者さんでは、自然免疫(生まれながらに持ち備えている免疫系)を介し気道炎症が引き起こされる機序も解明されています。ちなみに、IgE抗体を介するような免疫は獲得免疫と呼ばれます。「自然免疫を介し気道炎症が引き起こされる機序」とは、IgE抗体を介さずに気道の炎症が生じるルートもあるということです。
かなり難しい話になってしまいましたが、要するにダニアレルギーの有無に関わらず、アレルギー疾患ではダニによる病態悪化の危険性があるということです。したがって、室内環境におけるダニ対策を徹底することが重要と考えられます。