米疾病対策センター(CDC)が10月30日,学校での小児の食物アレルギーに関するガイドラインを発表した。CDCによると国家レベルでの食物アレルギーガイドラインは初めて。州や学区単位で独自のガイドラインはあるものの,食物アレルギーのリスク管理や緊急時の対応に関しては不十分な点が多く,総合的な枠組みを示す必要があったと説明している。
▶88%の学校に1人以上の食物アレルギー児が在籍
同ガイドラインは2011年に制定された,FDAが管轄する食品安全強化法(Food Safety Modernization Act ;FSMA)における施策の一環として策定。FSMAは,食品による公衆衛生上の問題を軽減するため制定された法律で,米国では毎年食物が原因の疾病で国民の6人に1人に相当する約4,800万人が病気になり,12万8,000人が入院,3,000人が死亡しているとの試算もある。
政府機関としての初の指針となる同ガイドラインだが,法的強制力はない(voluntary)。しかし,多くの州や学区で制定されているガイドラインでは対応や内容が不完全なものも少なくないとCDCは指摘。総合的な危機管理対策が必要とその意義を説明している。
ガイドラインによると,全米の小児の4~6%に食物アレルギーがあり,その数は1990年代後半に比べ18%増加している他,全米の88%の学校に食物アレルギーの子供が1人以上在籍している。また,食物アレルギーを有する子供の16~18%が学校でアレルギーの原因となる食品をうっかり食べてしまい,アレルギー反応を起こした経験があることや,学校で報告されたアナフィラキシーなど重篤なアレルギー反応の25%はそれまで食物アレルギーの診断を受けたことがない子供によるものとのデータなども紹介されている。
CDCを所管する米国保険福祉省(HHS)長官のKathleen Sebelius氏は「食物アレルギーの治療法は存在しないが,学校関係者が保護者や家族が直接ケアできない教育現場においても,子供を食物アレルギーから守る具体的な行動を取ることができる」と関係者に積極的な取り組みを呼びかけている。
▶教職員,医療者だけでなく,バス運転手や施設保守関係者などの対応も求める
同ガイドラインでは,全ての子供たちに食物アレルギーに関する教育が必要との見解が示されている他,教員や学校医や担当看護師,栄養士ばかりでなく,スクールバスの運転手や施設保守の関係者に求められる役割も記載。
また,全ての関係者に対しアナフィラキシーなど緊急時の自己注射用アドレナリン(商品名エピペン)の注射や日常の予防行動の1つとして,食事の前後には手を洗うよう子供に声をかけることが共通して推奨されている。併せて,体育の授業や休み時間に食物アレルギーの子供を特別扱いしないことや,差別やいじめに対する学校の規則を強化するなどの取り組みも求めている。
▶子供の訴えも早期発見に役立つ?食物アレルギーの表現一覧
一般的にアナフィラキシーが疑われる場合の症状として嘔吐や嗄声,呼吸困難,意識障害や唇・爪の色調変化などが挙げられているが,CDCは今回のガイドライン発表と同時に食物アレルギーが疑われる場合,子供がどのような表現で症状を訴えることがあるかを例示。子供目線での表現を知っておくことも,発症早期での発見につながるかもしれない。
1)舌を何かでつつかれているような気がする
2)舌(唇)がヒリヒリ(チクチク,ジンジン)する
3)舌(唇)が痒い
4)舌に毛が生えたような感じがする
5)口が変な感じ
6)喉にカエルがいる,喉に何か詰まっている
7)舌が腫れている(重い)
8)唇がきゅっとなった感じ
9)虫が中にいるような気がする(耳の痒さを表していることがある)
10)喉に何か詰まっている(うっとうしい)感じ
11)舌の奥(喉)にこぶがあるように感じる