前回、高密度繊維性の防ダニ布団(カバー)による気管支喘息(以下、喘息)予防効果についてお話しましたが、これはあくまでもダニ対策によってすでに発症してしまった喘息の症状をどれだけ抑えられるかという話です。アレルギーの発症をどのように予防していくのかということになるとより難しい問題です。例えば、アレルギー発症の危険性の高い児に対して出生前から防ダニ布団(カバー)を使用してみたらどうでしょうか。この方法によって喘息や鼻炎の発症が予防できるのでしょうか。残念ながら、これまで海外で行われた調査によると防ダニ布団(カバー)を含めた厳格なダニ対策を行っても喘息や鼻炎の発症は予防できないという結果がほとんどでした。喘息はダニだけが関与するような単純な疾患ではなく、多くの要素が関わる多因子疾患だからかもしれません。したがって現時点で行うべきアレルギー発症予防対策としては、タバコの煙の回避、生後6か月までの完全母乳栄養、ダニ対策を含めた環境整備、ビフィズス菌などのプロバイオティクス投与などを総合的に実行しなさいということになっています。ただし、これらすべてを行えばアレルギーの発症を完全に予防できるというわけではなく、環境整備のみを行うよりも効果が高いというだけの話です。まだまだ研究の余地がありそうです。