「うちの子は乳児湿疹なのか?アトピーなのか?どちらかわからないので不安。」、「病院を受診して乳児湿疹と言われたけれどなかなか湿疹がよくならない。」など、この2つの疾患に関する取り扱いはしばしば曖昧なものとなるようです。
医師が疾患の定義をきちんと確認するように心がければ、さほど混乱に陥ることはないと思います。すなわち、乳児湿疹とは何か?、乳児のアトピー性皮膚炎はどのように診断すればよいのか?、ということです。
まず、乳児湿疹という疾患は、乳児の皮膚に生じる様々な湿疹を総称した呼び方であるということを理解する必要があります。生後2~4週頃は皮脂の分泌が活発な時期であり、頭部に黄色みがかったガサガサを伴う脂漏性(しろうせい)皮膚炎ができやすいです。また、乳児の皮膚は薄く、かつ生後2~3ヶ月頃からは皮脂の分泌が低下するので、周囲の刺激に対して非常にダメージを受けやすい状態と言えます。つまり、乳児の皮膚は敏感で湿疹を生じやすいということです。さらには、アトピー性皮膚炎の初期は診断が困難であり、広い意味での乳児湿疹に含まれることになるでしょう。ちょっと長くなりましたが、これらの全てを総称して乳児湿疹と呼ぶのです。簡単に言ってしまえば、「赤ちゃんの皮膚にできる湿疹が乳児湿疹である。」ということでしょう。
こうなってくると、「乳児のアトピー性皮膚炎をどのように診断するか?」ということを考えた方がシンプルかもしれません。1)生後2~5ヶ月頃に顔面の湿疹で発症し、その後首や手足などに湿疹が広がる、2)痒みを伴う、3)慢性的に経過する(2か月以上続く)、乳児の湿疹の中でこれら1)~3)に当てはまる場合はアトピー性皮膚炎の可能性があります。特に、2)が重要です。問診を詳しく行えば赤ちゃんが痒がっているかどうかを見分けることは可能です。アトピー性皮膚炎を診断するだけなら、わざわざ採血をしてアレルギー素因を確認する必要はありません。
このようにして乳児湿疹とアトピー性皮膚炎を鑑別し、そこから治療が始まります。治療方針が大きく異なるわけではありませんが、診断をはっきりさせて、前向きな気持ちで治療に取り組むことがよい結果をもたらします。