そもそも、食物経口負荷試験(以下、負荷試験)を実施する目的は何でしょうか?
「食物アレルギー診療ガイドライン2012」では、以下の3つが挙げられています。
1)食物アレルギーの確定診断(原因アレルゲンの同定)
2)耐性獲得の診断
3)症状誘発リスクの評価
簡単に言い換えれば、1)は、アレルギーが有るのか無いのかをはっきりさせるということですし、2)は元々あったアレルギーが治ったかどうかを調べるということです。3)はどういうことかと言えば、アレルギーがある(まだ治っていない)とわかっている患者さんに対して、そのレベルがどの程度であるのかを調べるということであり、当然それなりのリスクを伴います。
さて、患者さん側からみた負荷試験の目標や理想像はどのようなものであると考えられるでしょうか・・・。ずばり、以下の2つではないでしょうか。
1) アナフィラキシーを起こさない
2) 食べられるようになる
1)については、前回(2014/11/26)も触れました。患者さんは、「わが子のアレルギーの有無を知りたい」、「治ったかどうかはっきりさせたい」という気持ちがあるのは当然ですが、やはりアナフィラキシーだけは起こしたくないはずです。さらには、最近では、医師側も
アナフィラキシーを回避すべきではないか?という意識が芽生えてきているように見えます。このような観点からすると、ガイドラインで挙げられている「耐性獲得の診断」は、
必要なことと言えるのでしょうか。研究レベルにおいては、「耐性獲得の診断」は残っていくと思われますが、今後は全ての患者さんにとって必要な方針とはならないかもしれません。
治ったかどうかを追及する必要があるのかどうかということであり、それを追及しようとすることで確実に負荷試験のアナフィラキシー症例は増えるでしょう。
そして、2)です。
過去には、負荷試験陽性→完全除去続行、の構図がありましたが、ここ数年において示されている「正しい診断に基づいた必要最小限の除去」の結果、負荷試験の結果が陽性であっても安全な範囲で食事摂取を進めていくという流れに変わってきました。ところが、「必要最小限の除去」とは言っても、実際には病院によって、あるいは医師によって、その指示は様々であり、患者さんは混乱している状況のようです・・・。
実のところは、正解はないのかとも思います。どんどん食べさせれば、食事の幅は拡がるのかもしれませんが、それなりの症状誘発のリスクは上がるわけです。「食べる」ことを優先するのか、「安全」を優先するのか・・・。「リスク」とはどの程度のものなのか?
例によって、わからないことばかりです・・・。