食物アレルギーの患者さんおよびその保護者(主に母親)の抱えるストレスにはどのようなものがあるでしょうか。「兄弟姉妹や友人と同じ食事が食べられない」、「除去食の献立を毎日考えることが大変」、「栄養に偏りがないかどうか心配」、「自由に外食ができない」、「周囲の人々が病気を理解してくれない」、「アナフィラキシー症状に対する不安・恐怖」など不安材料を挙げればきりがありません。実生活に直接関わるような事柄が多いのに気付くと思いますが、それは「食」という問題が我々の生活と切っても切り離せないものだからです。
それでは食物アレルギーの患者さんを診ていく上で我々はどのような点に気を付けていけばよいのでしょうか。まず第一に、医師はもちろんのこと患者、保護者、園学校関係者、保健婦、栄養士などが、食物アレルギーに対する正しい知識を持つことです。曖昧な知識や間違った指導方針が患者さんや保護者を混乱させる原因となるからです。そして次のステップが、食物アレルギーの正確な診断です。これはもちろん前述した「正しい知識」を持つことが前提になります。今でも、血液検査(特異的IgE値)の結果だけから食品の除去を指導されている例は少なくありません。とにかく、どの食品にアレルギーがあるのか、どの食品が食べられるのかなどについて正確に診断・指導していくことが重要です(当たり前のことですね)。最後に、食物アレルギーが広く社会的問題を含む疾患であることを認識して患者さんや保護者に接することが重要です。医療関係者や教育関係者は、患者さんやその家族が日々の食卓や園学校での生活においていかなるストレスを感じているのかを理解しなければいけません。「小麦アレルギーならば単に小麦を除去すればよいだけの話だ。」とは考えていただきたくないのです。
一言付け加えますが、現在ちまたでは「食の安全」というテーマに大きな関心が寄せられていますが、食物アレルギーを食中毒、食品添加物、環境ホルモンなどの問題と混同して考えることだけは注意すべきです。