エピペンは、アナフィラキシー*を起こす危険性が高く、万一の場合に直ちに医療機関での治療が受けられない状況下にいる者に対し、事前に医師が処方する自己注射薬です。0.3mg製剤(体重30kg以上)と0.15mg製剤(体重15kg以上30kg未満)の2種類があり、アナフィラキシー症状出現時に大腿の外側に筋肉注射します。この薬剤を投与することにより、心拍数が上がる、血圧が上がる、喉のむくみが改善する、などの効果が得られます。アナフィラキシーショックによる死亡例の検討によれば、アドレナリン投与が適切なタイミングでなされていない場合に重症化する傾向がみられています。すなわち、少なくとも症状が発現してから30分以内にアドレナリンを投与すべきであるということです。
もともとは、本人もしくは保護者が自ら注射する目的で作られたものですが、状況によっては本人(もしくは保護者)が注射することはできず、第3者の手を借りなければならない可能性もあります。しかし、医師法第17条において「医師以外の者が医業を行ってはならない。」と定められているため、学校でアナフィラキシーが発症した場合でも教職員が積極的に注射することはできない状況にありました。今春ようやく、文科省から「救命の現場に居合わせた教職員が注射しても医師法違反にならず、刑事・民事責任も問われないと考えられる」という考えが示され、重症食物アレルギー児の学校生活に光明がさしました。今後も様々な面で患者さんがエピペンを使用しやすい環境が整っていくことを期待したいと思います。
*アレルギー反応により、じんましんなどの皮膚症状、腹痛や嘔吐などの消化器症状、ゼーゼー、呼吸困難などの呼吸器症状が、複数同時にかつ急激に出現した状態