アトピー性皮膚炎の治療において「なるべくステロイドを使いたくない」と考える患者さんは少なくありません。しかし、ステロイド外用薬を使用せずに皮膚の炎症を放置していたらどうなるでしょうか。軽症の皮膚炎であれば、こまめなスキンケアだけで皮膚の状態を改善させることが可能かもしれませんが、ある程度以上の皮膚の炎症がある場合は、早めに炎症(火事のようなものです)を抑える治療法が必要となるはずです。どんな病気でも「自然治癒」という経過をとることがあるので、アトピー性皮膚炎においても「ステロイドを使わなくても治った!」という患者さんが全くいない訳ではありません。しかし、すでに悪化してしまったアトピー性皮膚炎に対して、炎症を抑える治療法を行わなかった場合は、1)痒みが抑えられないため掻破(そうは;掻きむしること)が強まりさらに皮膚炎が悪化する、2)掻破によりアレルギー反応が増強する、3)皮膚のバリアー機能が破壊されアレルゲンや細菌、ウイルスの影響を受けやすくなる、4)結果的には、作用の強いステロイド外用薬をより多く使用する必要性が高まる、などの問題点が生じるのです。
簡単に言えば、「早期にステロイド外用薬を使用し皮膚の炎症を抑える」のが最も患者さんを楽にすることができる方法であるということです。医師は、適切な強さのステロイド外用薬を適切な量で塗るように指示するので、安心してそれに従うことが治療の早道です。ときどき、苔癬化(慢性の経過によって、象の皮膚のように硬くなった状態)が著しい幼児~学童の患者さんが来院されますが、皮膚状態を改善させるのにそれなりの日数がかかってしまいます。「もっと早い段階で適切にステロイド外用薬が使用できていれば・・・」と思ってしまうのです。
それでもステロイド外用薬に対する不安はぬぐいきれないものがあるかもしれません。何が、どのように不安であるのかを明らかにしていただき、それに対する説明をしていかなければいけないかと考えています。