アレルギーの患者さんがこの30年くらいの間に急激に増加してきました。どうしてこのように増えてきているのかは良くわかっていないのですが、衛生仮説と呼ばれる興味深い学説があります。これは1989年にイギリスのStrachan博士により提唱された学説であり、生活環境においてあまりに清潔さを追い求めると、かえってアレルギー体質に傾いてしまうという考え方です。「農家で育った子どもはアレルギーが少ない」、「兄弟姉妹が多いほどアレルギーになりにくい」、「猫をたくさん飼っているとアレルギーになりにくい」、「早期にBCG接種(結核菌感染)するとアレルギーになりにくい」「乳幼児期の抗生物質投与によりアレルギーのリスクが高まる」などは衛生仮説を裏付ける研究報告の例ですが、いずれも細菌やウイルスに多く感染した方がアレルギーになりにくいかもしれないということを示すものです。しかし、実際には単純ではなく、上記の研究報告の結果をそのまま普段の生活にあてはめることはできません。例えば、アレルギーを予防するつもりで猫を飼ったら、かえって猫アレルギーになってしまう危険性もあるわけです。どのような人(遺伝的要因)が、どのようなタイミングで、何匹の猫を飼うのかによって結果が変わってくるのかもしれません。このような遺伝と環境の相互関係についても研究が続けられています。