実際は喘息の症状があるにもかかわらず、患者さんの多くは「喘息をコントロールできている」と過大評価しており、治療目標に対してコントロールが不十分であることが少なくないとされています。反対に、医師が患者さんのちょっとした症状を見逃して、「この患者さんは調子がよい」と誤認してしまうパターンもあり得ます。いずれにせよ、これらの患者さんは必要十分な治療を受けられないまま経過してしまう危険性があるわけです。
喘息患者さんに対する症状の問診は必ずしも簡単ではありません。いわゆる呼吸器専門医やアレルギー専門医は、詳しい問診によりできる限り正確なコントロール状態の評価を行おうとします。「運動したり、はしゃいだ時にせきが出ますか?」、「冷たい空気でせきが出ますか?」、「風邪を引いた後にせきが長引きやすいですか?」、「熱がなくて元気なのにせきが出やすいと感じたことはありませんか?」、「ゼーゼーしたり息苦しい時はありますか?」などしつこく質問を繰り返すわけですが、正確な診断は意外と難しいものです。例えば、小中学生の場合、学校で体育の時に症状が出ていたとしても帰宅後に元気な姿しかみせなければ母親は何も気付かないということになります。逆に、せきが出ていれば全て喘息症状とは限らず、ただの風邪かもしれませんし、副鼻腔炎(蓄膿症)などの別の原因もあり得ます。概ね専門医はこれらの全ての状況を頭に入れつつおおよそのコントロール状態を把握することができるものです。治療を決定するための重要な作業なのです。