海老澤元宏先生から「経口免疫療法(急速法と緩徐法)の総括」というタイトルで講演がありました。
食物アレルギーにおける経口免疫療法とは、症状が出ない程度の量から原因食物を摂取させ、段階的に増量しながら、最終的に減感作状態や耐性獲得を目指す治療法です。減感作状態とは、食べ続けていると症状が出ない見かけ上治ったようにみえる状態を指します。また、耐性の獲得とは、食べ続けることを中止しても症状が出ない本当にアレルギーが治った状態を指します。経口免疫療法の究極の目標は耐性の獲得にあるわけです。
さて、講演の後半で、「今後は我々の初期対応が変化してくると思われるので、重症の食物アレルギー患者さんが減ることが期待される。」というお話がありました。「初期対応」の詳細については触れていませんでしたが、1)乳児アトピー性皮膚炎に対する早期介入、2)乳幼児期早期の段階からの経口摂取、等が挙げられるのでしょうか。
1)については外来で患者さんによく説明していますが、バリア機能が低下した皮膚から食物が経皮的に吸収され、食物アレルギーを発症する経路(経皮感作)が注目されており、乳児のアトピー性皮膚炎を早期に治療・管理することが食物アレルギーの予防につながる可能性があります。もっと早い段階の新生児期から介入すれば、アトピー性皮膚炎の発症そのものを阻止できるかもしれません。2)についてもまだ十分に解明されているわけではありませんが、完全除去の期間が長いと過敏になり、かつ治りにくくなる危険性があります。乳児期から少しずつ摂取させた方が経口免疫寛容が働きやすく身体は受け入れやすいのかもしれません。これらはあくまでも臨床医の印象であり、科学的証拠は十分ではないはずですから、患者さん(保護者)が自己判断で勝手に食べさせることは控えて下さい。