“乳児湿疹”という病名は赤ちゃんの湿疹に対してしばしば用いられる病名ですが、乳児のアトピー性皮膚炎と診断されるべき症例が乳児湿疹として扱われていることが多いという問題があります。全身の特徴的な部位に慢性に経過する痒みを伴った湿疹であれば、つまり、赤ちゃんの顔面から始まって2ヶ月間以上続く痒みの強い湿疹であれば、アトピー性皮膚炎を疑わなければいけないということです。診断をはっきりさせなければ、患者さんは治療に対して前向きに取り組むことができません。さらに最も重要なのは、この乳児期のアトピー性皮膚炎を正しくとらえることが、小児のアレルギー診療の第一歩になるということです。「乳児のアトピー性皮膚炎は食物アレルギーを合併しやすい」、「それでは食物がアトピー性皮膚炎の原因になっているということなのか?」、
「アトピー性皮膚炎の治療はどうすればよいのか?食物の除去は必要なのか?」、「食物アレルギーはどのような経過をたどるのか?いつになったら食べられるようになるのか?」、「これらのアレルギー素因を有する児は、将来喘息やアレルギー性鼻炎を発症するリスクが高い」などについて順を追って頭の中を整理していただけるようにお話するよう心がけています。保護者は、最初につまづいてしまうと、誤った方向に進んでしまいます。「アトピー性皮膚炎が治らないのは全て食べ物のせいだ」、「ステロイドは副作用が極めて強い危険な薬だ」、「何度もゼーゼーを繰り返しているが喘息というほどではない」などの考え方に走ってしまうパターンは、乳児期に正しい方向付けを得られていない場合に起こりやすいのです。乳児期のアレルギー児を診る我々の責任は重いのです。