アトピー体質であるかどうかどうかを調べるための血液検査として血清総IgE値があります。アトピー性皮膚炎の患者さんでは、この血清総IgE値が著しく上昇している場合があり、中には数万という値を示す患者さんもいます。同じアレルギー疾患でも、気管支喘息の患者さんではそんなに驚くほど高い値を示すことはありません。さて、IgE値が高いからアトピー性皮膚炎になるのでしょうか?IgE値が高いと湿疹が悪化するのでしょうか?後者は間違いではないかもしれませんが、IgEが高いことが病気の始まりではありません。アトピー性皮膚炎の発症のきっかけは、皮膚のバリア機能低下であり、簡単に言えば「皮膚が脆い(もろい)」ということです。バリア機能が低下した皮膚から侵入した食物やダニなどのアレルゲンに対してIgE抗体が作られていくのであり、湿疹を放置しておくと次から次へと食物やダニなどへの感作が進むことが心配されます。
どのような治療法を選択するにせよ、乳児のアトピー性皮膚炎は1-2歳くらいになってくると改善してくる場合が多いように感じられます。しかし、上記のようなアレルギーの進展の可能性があるとしたら、なるべく早期に皮膚状態を改善させ、様々なアレルゲンに対するIgE抗体が産生されていかないように最善を尽くすべきでしょう。のんびりとしていられないのです。ポイントを挙げるとしたら、しっかりと皮膚を洗浄してアレルゲンや黄色ブドウ球菌を取り除くこと、そしてステロイド外用薬を塗布し皮膚の炎症を改善させることです。
ただし、ダニのIgE抗体が産生されたからといってその患者さんが全て喘息やアレルギー性鼻炎を発症していくとは限らないことを付け加えさせていただきます。