アナフィラキシーは危ないのか、危なくないのか?これは医学的に言えば当然危ない症状であるということになるのだと思いますが、とかく医療者はアナフィラキシーについて論じるときに、「危険性」という観点に傾いた議論をしがちに見えるのです。我々医師はアナフィラキシーを診断し、さらに適切に治療しなければいけないわけですから、その病態の重症度や危険性を的確に把握しなければならないのは当然でしょう。
さて、患者さん(子ども)やその保護者からみたアナフィラキシーはどういうものにみえるでしょうか。危険という表現も出てくると思いますが、その他に「怖い」とか「苦しい」、「つらい」などというイメージもあるのではないでしょうか。「危険も苦しいも全部似たようなものではないか!」と考える医師がいるかもしれませんが、それはちょっと違うと思います。処置を行う医師はアナフィラキシーの危険性は認識しながらも、医師自身は何も苦しいという感覚はないということはあり得るわけです。経験を積んだ医師であれば「一緒に心の痛みを分かち合う」という状態に自然に入り込んでしまうのですが、とにかく私が言いたいのは「アナフィラキシーでつらく苦しい思いをしている子どもの気持ちを無視するな!」ということです。こんなことは教科書には書いてないのです。
我々アレルギー専門医は食物経口負荷試験や経口減感作療法(経口耐性誘導療法)を実施する過程において、期待に反してアナフィラキシーを誘発させてしまう場面があります。この時に患者さんが感じるであろう「苦しい」という気持ちを決して忘てはならず、できる限りこのような感覚を与えることなく検査や治療を行う努力をしなければいけないと思っています。検査や治療に伴うアナフィラキシーは専門医にとってもつらい場面です。「すべては子ども達の将来のため・・・」、みんなそういう熱い思いで取り組んでいるはずですが、そのようなアレルギー症状を最小限に食い止めようという気持ちは重要だと思うのです。