喘息の病態の大きな特徴の一つとして「気道過敏性」を挙げることができます。気道過敏性とは、健康な人では反応しないようなちょっとした刺激に敏感に反応して咳や喘鳴(ゼーゼー)などの症状を起こしてしまうような状態を指します。喘息患者さんは、ダニ、カビ、動物のフケなどのアレルギーを引き起こす原因物質(アレルゲン)以外の様々な刺激にも反応し、喘息症状を引き起こします。例えばタバコの煙、花火の煙、冷たく乾いた空気、急激な運動などが喘息発作の引き金となり得るでしょう。このような様々な刺激に反応しやすくなっている状態こそ、まさに気道過敏性が亢進した状態と言えるのです。
なぜ喘息の患者さんは気道過敏性が高まっているのでしょうか?これは非常に難しい問題です。喘息は気道の慢性的な炎症であるとお話したことがあるかと思いますが、この気道炎症が気道過敏性の最も大きな要因となっていることは間違いなさそうです。実際、吸入ステロイドで治療を行い気道炎症を抑えると気道過敏性も低下してきます。しかし、気道過敏性の本態はもっと複雑なようです。長く喘息に罹っているような患者さんは、気道リモデリングと呼ばれる気道の壁の厚くなったような状態を伴っている場合が多いのですが、この気道リモデリングも気道過敏性の要因の一つとなるようです。気道リモデリングは喘息の治療薬に反応しにくい気道の構造的な変化と考えられています。したがって、リモデリングが関与している気道過敏性は簡単には改善しない可能性があります。
以上を総合して治療的な面から気道過敏性について考えるとすると、「適切な治療によって気道炎症を抑えることによって気道過敏性を低下させ、喘息患者さんが発作のない安定した生活を送ることができるように調節する必要がある。」と言えます。また、「気道リモデリングが進んでくると気道過敏性がとれにくくなるので、比較的早い段階で喘息治療をしっかり行う必要がある。」ということも重要です。