乳児とは一般には1歳未満の小児を指しますが、わが国のガイドライン(2008/06/27)においては、2歳未満の小児の気管支喘息を乳児喘息と定義しています。小児喘息の多くがこの時期に発症する(約60%が2歳までに発症)ので、乳児喘息を早期に診断し適切に治療や管理を行っていくことは非常に重要です。
乳児喘息に関して最も問題となることと言えば、その診断の難しさでしょう。
小児科の外来では小さなお子さんから多種の喘鳴(2008/10/30)を聴き取ることができます。「ゼーゼー・ヒューヒュー」だけではなく、「ゼロゼロ・ゼコゼコ・ゴロゴロ・ブーブー」などいろいろに表現される喘鳴があるのです。身体(気道)の中のどの部分で鳴っている音なのか?、その部分がどれくらい狭くなっているのか?などを反映して音の性質が決まってくるのです。この中から真の喘息を見極めていくことは必ずしも簡単ではありません。一応、典型的な喘息の喘鳴を説明するとしたら、息を吐く時に聴かれる「ゼーゼー・ヒューヒュー」という感じの音です。聴診器で聴かなければわからない場合もあります。
乳児喘息の診断の混乱を防ぐために、そして何よりも早期に診断し適切な治療・管理を行うために、ガイドラインでは乳児喘息の診断の基準を示しています。すなわち、「3回以上ゼーゼーを繰り返したら乳児喘息と診断する。」ということです。保護者の方からは次のことをよく質問されます。「3回ってどういうことですか?」と・・・。3回というのは、例えば生後9か月、1歳2か月、1歳5か月と生まれてから3回ゼーゼーするような症状が認められたということです。この時に風邪をひいていたとか、ひいていなかったとかは関係ありません。この診断基準を用いることによって、乳児喘息をシンプルに診断できるようになりました。ただし、他の肺や心臓の病気を喘息と誤診してしまうことにも注意しなければいけません。もちろんこれを見分けるのは患者さんではなく医師の仕事ですが・・・。