小児科でよくみられる長引く咳にはどんな病気があるでしょうか。前回、百日咳などの病名も登場しましたが、このような病気は近年ではそんなに数多くみられるわけではありません。ここではずばり2つの病気を挙げてみたいと思います。
1つ目は、「喘息」です。喘息の症状と言えば、ゼーゼー・ヒューヒューなどの喘鳴(ぜんめい)や息苦しさなどを思い浮かべるかもしれませんが、咳も喘息の主要な症状の一つです。時間帯としては朝晩に多く、また状況としては風邪を引いた後や運動後などに生じやすい傾向があります。痰がからむ時もあれば、乾いた感じの咳の時もあります。風邪の咳と区別が難しいのですが、年間を通じて頻繁に咳をしている子どもをみた時には忘れてはならない病気です。咳が主体で、あまりゼーゼー・ヒューヒューが確認しづらい場合があるのです。近年頻度が高くなっている病気であり注意しなければいけません。
もう1つは、「慢性副鼻腔炎」です。痰がからむような咳が続いて、気管支炎などと誤解されることもありますが、この場合は痰というよりも鼻汁がのどに垂れこんで咳の原因になっているわけです。副鼻腔というのは顔の骨にある空洞部分であり、この中に鼻水や膿(うみ)が溜まって炎症を起こしている状態が副鼻腔炎です。黄色いねばねばした鼻汁・鼻づまり・長引く咳・頭痛・集中力の低下・不眠などの症状が特徴です。
病気の診断は医師の仕事なので、患者さんがこれらの病気の発見に力を注ぐ必要はありませんが、とにかく頻繁に咳をする子どもさんがいた場合にそれがただの風邪なのかどうかということを気にかけていただきたいのです。2つの病気はともに慢性の病気であり継続的な治療が必要なのです。